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静岡大院試:有限公理化可能性について

Twitterで流れてきたので:これの[9](2)について。

言語として $L = \{{+}, 0, {-} \}$ を用いることにする。

ねじれの無いアーベル群全体は公理化可能である。実際これは、アーベル群の公理系に以下の公理らを加えればよい:各 $n \ge 2$ に対して、 $$ \varphi_n \,:\equiv\, \forall x,\ \underbrace{x + \cdots + x}_{n \text{ times}} = 0 \to x = 0 \quad \text{。} $$

一方で、このクラスは有限公理化可能でない。証明は背理法による。仮にこれが、ある論理式 $\psi$ によって定義されるとする。公理系 $\Phi = \{ \varphi_n \mathrel| n \ge 2 \} \cup \{\lnot\psi\}$ を考えよう。$\Phi$ は有限充足可能である(十分大きい素数 $p$ に対して $\mathbb{Z} / p \mathbb{Z}$ を考えれば良い)。一方で $\psi$ の取り方から $\Phi$ は充足不可能であり、これはコンパクト性定理に反する。

さて、上の証明では、有限公理化可能なクラスの補クラスも公理化可能であることを用いている。実は、この逆も成り立つ。

定理. モデルのクラス $\mathcal{M}$ に対して、 $\mathcal{M}$ と $\mathcal{M}^c$ が公理化可能なら $\mathcal{M}$ は有限公理化可能である1

証明. $\mathcal{M}$ と $\mathcal{M}^c$ がそれぞれ公理系 $S$, $T$ で定義されるとする。このとき、$S \cup T$ はモデルを持たないので、コンパクト性定理により有限部分集合 $S_0 \subset S$ が存在して、 $S_0 \cup T$ もモデルを持たない。このとき $S_0$ がすでに $\mathcal{M}$ を定義している:モデル $A$ が $A \models S_0$ を満たすとすると、 $S_0 \cup T$ はモデルを持たないので $A \not\models T$ であり、$A \not\in \mathcal{M}^c$ すなわち $A \in \mathcal{M}$ である。

(サイズの問題を適当に解決すれば)公理化可能なクラスを閉集合と見なすことで、モデル全体のクラスに位相を入れることができる2。上の定理は、この位相においてclopenなクラスと有限公理化可能なクラスが一致することを述べている。


  1. logic - Finitely axiomatizable theories - Mathematics Stack Exchange とか。

  2. 例えば Bruno Poizat “A Course in Model Theory: An Introduction to Contemporary Mathematical Logic” に完全な公理系全体(i.e. モデル全体 mod 初等的同値)に位相を入れる話が載っているようだ(読んでいないが)。